この10年の間に我々が取り組んできたこと
- 冠動脈複雑病変への治療
- OCTやFFRなどの新しい画像・診断デバイスの導入
- 末梢動脈病変治療(EVT)の進歩 ➡別項参照
- Structure Heart Disease (SHD) に対する治療 ➡別項参照
- .CTEPH( 慢性血栓性肺高血圧症 )への肺動脈形成術(BPA) ➡別項参照
- 冠動脈治療のハンズオンセミナー(KBCS)による若手育成
この10年の間に我々が取り組んできたこと
我々は少ないベッド数でやり繰りをしてInterventionをしておりHigh Volume Centerに比して不利な状況ではあるが、入院日数の短縮などの努力によって症例数は近年順調に増加している。冠動脈疾患においては以前はすぐバイパスに回していたような慢性完全閉塞病変(CTO)や左主幹部(LMT)病変なども安全に配慮しながら治療をしている。どうしてもPCIをと希望される患者様では3枝病変を含む多枝病変でも治療をしており、良好な成績を上げている。このためもあり2013年からは年間のPCI件数も200例を越え、Rotabulatorの使用も可能となり、以後2015年もすでに200例を越えており3年連続で200例を超えるPCIを施行。さらに末梢血管への治療、ASDを中心としたStructure Heart Diseaseに対する治療、CTEPH( 慢性血栓性肺高血圧症 )への治療(BPA)なども年々増加している。さらに2016年からは本格的にTAVIも開始される予定であり我々はさらに多忙となってきている。(図1)
慢性完全閉塞病変(CTO)に対するPCIは先人達の努力によって近年格段の進歩を遂げている。PCIに使用されるguidewireやmicro cathe、balloon等のデバイスの進歩により順行性アプローチの成功率が格段に上昇しただけでなく、対側の血管からの側副血行路を通ってwireを通過させる技術(逆行性アプローチ:retrograde approach)ももはや標準的治療と言って良い。筆者らは2009年3月に初のretrograde approachによるCTO治療に成功している。これはまだLiveに出てくるような一部のSpecialistしか施行しておらず、現在retrograde approachで標準的に使用されるmicro cathe (Corsair)の市販もされていなかった時期である。(図2-3)
現在では非常にトルク性能の良いCTO向けのGaia wireやretrogradeに特化したCorsairなどのmicro catheが使用可能になり格段に成功の確率が上昇している。とは言え初心者が容易に施行できるわけではなくそれなりの知識と経験が必要である。現在当施設では中堅の十分経験を積んだ術者にはretrograde approachも指導する体制が整っている。
次に左主幹部病変(LMT)への治療であるが、最近の循環器学会の治療Guidelineでも病変形態によってはPCIはCABGと遜色無い成績が得られていることを背景に増加傾向にある。(図4)
LMTに対する待機的PCIの症例では近年手技による梗塞・死亡例は無く、安全に施行できている。
すでに血管内超音波(IVUS)や圧センサー付きwireによるFFR計測は以前から導入していたが2013年からは光干渉波断層像(Optical Coherence Tomography:OCT)を導入し日々の臨床に使用している。これはIVUSよりも高解像度、定量性に優れるため、3次元画像の構築による立体構造の把握(図5)やStent mal-apposition(図6) 、不安定Plaque(図7)などの評価に有用であり、PCIのstrategyにまで影響を及ぼす勢いである。ただし血液を除去しないと画像が得られない(造影剤もしくは低分子デキストランが必要)、IVUSよりも到達深度が短いなどの短所もあり場面によってIVUSと使い分ける必要がある。最近ではOCTによるエビデンスも出てきており、2016年にはCAG画像とのリンクなども可能となるため、さらに使いやすく有用な検査となりそうである。
今後の研究課題としてはBVSの導入に合わせてOCTによる定点観測により冠動脈の伸展性がどのように改善するかや、石灰化の影響、Myocardial bridgeやspasmを生じる部位での血管径の変化など、血管のfunctionに焦点をあてて検討して行きたい。
我々は10年前から関連病院の先生方と一緒になって年2回、計20回にわたり、研修医・学生向けのCAG/PCIハンズオンセミナーであるKBCS(Kyoto Basic Coronary Care Seminar)を開催してきた。これは進路を決定する前の若いドクター達に、我々が普段おこなっている心臓血管カテーテル治療の素晴らしさ、面白さを理解して頂こうと始めたものである。関連病院の先生に持ち回りでDirectorをお願いしミニレクチャーをして頂いた後、実習に入る。内容はCAGのカテ操作の仕方からPCIデバイスの使用法、ワイヤリング、さらには実際のアンギオ装置を用いて透視や撮影、ステント留置まで実際に施行する本格的なものである。すでに受講生は200名を越え、この勉強会を通じて循環器内科に興味を持ち、循環器内科に進んだドクターも多数おられます。この10年で我々の教室に循環器として入局した若手の8割以上がこの勉強会を受講している。さらに関連病院の先生がたに指導を受け、その病院に馴染みを感じて赴任する際にも良い影響があるようです。他の大学では循環器内科に進む若手が減っていると聞きますが、本学では減っておらず、この勉強会を開催している効果は少なからずあると自負しています。(図8-10)
このHomepageをご覧の研修医のみなさんも、是非参加してみませんか?
次回は2016年6月-7月頃開催になる予定です。2016年4月頃にはこのHomepageで募集の案内が出ると思いますが開始時期はまだ未定です。人数には限りがありますので頻繁に見に来てくださいね! 関連病院の循環器内科の先生に募集情報を聞くのも良いかもしれませんよ!