臨床研究グループ

心臓リハビリテーション

 心臓リハはもともと急性心筋梗塞の離床プログラム、運動指導から始まったが、現在は慢性心不全患者への運動療法、疾患指導、栄養指導、ASOなど下肢動脈疾患、肺高血圧症へのリハビリなど幅広く分野を広げている。

心臓リハビリ 当院の特徴はリハビリテーション部の中に心臓リハの部門があるため、理学療法士を中心としたスタッフが運営を担ってきたことにある。もともとの理学療法士としての知識と経験を心臓の患者に応用し訓練内容を考えることは現在の高齢化、重複障害、疾患の重症化を踏まえて大変重要なことである。当院は重症心筋梗塞・心不全症例に対して循環器内科・心臓血管外科の高度医療を迅速・効率的に実施するための「高度心臓血管センター」を設置しているため、重症症例も多くほぼ全症例が急性期から心臓リハが依頼される。また夜久教授主宰される心臓血管外科は全国的にも有数の心臓血管外科のチームであり、年間200名を超える開心術症例のほとんどが心臓リハに廻ってくるため、貴重な経験を積むことができている。循環器内科、心臓血管外科合わせて年間に3500-4000件程度のリハビリを実施している。心リハ指導士も5名在籍しより患者に合わせた専門的な指導訓練を行っている。

今日の心臓リハ

 心臓リハはもともと急性心筋梗塞の離床プログラム、運動指導から始まったが、現在は慢性心不全患者への運動療法、疾患指導、栄養指導、ASOなど下肢動脈疾患、肺高血圧症へのリハビリなど幅広く分野を広げている。

心臓リハビリ当院が取り組んできた特徴的なこととして①再生医療後の重症下肢虚血に対しての心臓リハ②デバイス(ICD/CRT/CRTD)植え込み術後の心臓リハ③慢性心不全患者へのチーム医療 などがあげられる。

  1. 当院の循環器内科は、慢性閉塞性動脈疾患、とくに重症虚血肢に対して骨髄単核球細胞移植による再生医療を行っており、再生医療後の症例にも運動療法を導入している。従来重症虚血肢への運動療法は虚血悪化の懸念から禁忌とされてきたが、疼痛や潰瘍による活動量の低下から廃用症候群に陥り、ADLが低下している症例が多い。そこでこのような患者には筋力トレーニングの他、装具を作成しできるだけ虚血域を免荷させた状態での歩行練習を行ってきた。現在まで特に大きな合併症や事故もなく運動療法を施行できており、ADL向上や血管新生の促進に寄与できていると考えている。
  2. デバイス植え込み患者のリハビリについて当院ではこれまで詳細に検討して学会発表、雑誌、書籍などへの発表を行ってきた。最近のものを挙げると、1、棟近麻衣ら、心不全患者に対する植込みデバイスから得られるHeart Rate Histogramの特徴.心臓リハビリテーション20:81-86,2015。2、白石裕一ら。デバイス(ICD・CRT-D)装着患者に対する心臓リハビリテーション・運動療法をどう実践するか?Heart view 2014;18:100-107。3、白石裕一、書籍 心臓リハビリテーション 心臓リハビリテーション各論 ペースメーカ、ICDまたはCRT-D装着 心臓リハビリテーション p277-286 医歯薬出版 2013.7.15 第1版、4、白石裕一ら、デバイス治療(ICD,CRT,CRTD)後の心臓リハビリテーション心臓 2012; 43:268-273などである。これまであまり行われてこなかった分野であり学会でも興味を持ってとりあげていただくことができた。現在もひきつづき症例を蓄積し栄養障害との関与など調査を広げている。
  3. 慢性心不全へのチーム医療:チーム医療の重要性は改めて語る必要もないが、繰り返す心不全患者への指導を皮切りにチーム医療介入を数年前から始めた。患者指導が職種間でばらけることがないように看護、薬剤、栄養、心リハ、医師、各チームの合同で指導パンフレットを作成しそれを用いて患者指導を行うようにしたこと、年に数回のチーム医療の勉強会(研究会)を開催し知識や指導のレベルを高めること、循環器疾患の勉強会を循内スタッフを中心に院内研修会を開催している。

その他学会活動

 熱意あるスタッフ、関係医師の協力により、心臓リハ学会を始め多くの学会でシンポジウムなど大きな場での演題発表を継続することができている。スタッフの皆さんに感謝申し上げるとともに今後も引き続き幅広い取り組みを続けていきたいと思っている。

 また、当院は心臓リハビリテーション指導士の教育研修施設であり、これまで多くの研修生を受け入れて指導を行ってきた。週に5日間の40時間の研修は教える側も教わる側も大きな負担であるが指導する中で教える側の学ぶことも多く、精力的な指導を行っている。

(文責:白石裕一 2015.12月)
^