臨床研究グループ

心エコー図グループ

京都府立医大循環器内科の母体である旧第二内科には,長年にわたり肥大型心筋症の臨床研究を行い,特に1980~90年代に優れた業績を挙げていた「心筋症グループ」が存在しました.筆者が入局したのは1995年でしたので,今思えば同グループの最盛期は過ぎていたのかもしれませんが,それでも心エコー図で様々な異常を鮮明に描出し,私たち研修医に明快に説明して下さる心筋症グループの先生方は私にとっては憧れの的でした.私が心エコー図に専門的に取り組むようになったきっかけはその他にもいくつかありますが,そのルーツは「心筋症グループ」にあると思っています.~プローブひとつで詳細,かつ正確な診断ができて,その後の治療方針を決めることができる~心エコー図の魅力は極論すれば,これに尽きます.時は流れて,現在我々の診療の中心は心筋症ではありませんが,弁膜症に対する弁形成術の適応拡大や後述のstructural heart diseaseなど心エコー図の循環器臨床における重要性はさらに増しています.ただ,心エコー図について忘れてはいけないことは,同じ一枚のイメージを見ても,分からない人には1しか分かりませんが,きっちりとトレーニングされた人には100のことが分かるという事実です.かつて私は偉大なる先輩に「心エコー図レポートで最も重要な項目は検査者の名前である」と諭され,これを深く自分の胸に刻んでいます.誰からも信頼される心エコー図検査を実施するために研鑽し,また同じような気概をもつ医師を一人でも多く育てたいと考えて,日々の臨床に取り組んでいます。

 現在の当グループにおける主たる業務は通常の経胸壁心エコー図以外に年間約250件の経食道心エコー図,さらに同約50件の運動負荷心エコー図(2015年)です.その他,我々のグループの他施設とは異なる特徴的な取り組みをご紹介します.

心臓血管外科との経食道心エコー図カンファレンス

 当院の心臓血管外科は,非常に多くの僧帽弁形成術を実施しています.さらに最近では大動脈弁形成術にも積極的に取り組んでいます.術前の心エコー図,特に最近では三次元経食道心エコー図による詳細な弁形態,及び機能評価は形成術成否のカギになることは,既に広く知られる通りです.当院では,2011年から夜久 均本学心臓血管外科教授を含めた外科医と我々心エコー図グループで弁形成術予定症例の術前,及び術後の心エコー図カンファレンスを実施しています.現在は毎週水曜日に,術前心エコー図を内科医が説明するとともに,術後の症例は実際の術中映像を供覧しながら執刀医に所見について解説してもらっています.この場で会得することは,我々内科医にとっても,また外科医にとってもお互い勉強になることが多く,既に4年間このカンファレンスは続いています.最近では他施設からの参加者や,麻酔科医師にも参加頂いており,さらに多面的な知識が得られる機会となっています.この日々のディスカッションが当院の心エコー図全体の質向上に寄与すると信じています.またこの場で生まれた発想が,新たな臨床研究の題材になることも多く,米国心臓協会(AHA)などの演題発表にもつながっています。

  • 心エコー
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Structural Heart Disease (SHD) 診療に対する取り組み

心エコー SHDとは,大動脈弁狭窄に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)や,経皮的心房中隔欠損(ASD)閉鎖術などに代表される,カテーテルにより治療可能な冠動脈疾患以外の心臓病,ならびにその治療手技を総称する言葉です.SHD診療に質の高い心エコー図診断が必須であることは言うまでも無く,当グループでも様々な取組みを行ってきました.当科では2011年に施設認定された経皮的ASD閉鎖術が順調に症例数を伸ばしていますが,心エコー図はこの治療に対して,術前評価は勿論,ASD欠損孔は透視では全く見えませんので,治療ガイドとして極めて重要です.一般に経食道心エコー図を見ながら(ガイド)治療が行われることが多く,長時間のプローブ挿入が必要になるために全身麻酔で行われることが多い手技ですが,当科では鎮静に様々な工夫を行うことで,大部分の症例で非全身麻酔下に経食道心エコー図ガイドの閉鎖術を安全に実施しています.また,最近では心腔内エコー図による治療ガイドで非全身麻酔閉鎖術も実施し,これら心エコー図による治療ガイドは全て心エコー図グループの専門医師が実施しています。

心エコー

運動負荷心エコー図による様々な疾患の評価

 当グループでは仰臥位エルゴメータを利用した運動負荷心エコー図検査を日常的に実施しています.特に僧帽弁形成術後の運動時血行動態の評価や,強皮症を中心とする膠原病性肺高血圧症の早期診断に対する取り組みを積極的に行っています.また新たに大動脈弁狭窄,特に最近注目される奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄の評価にも運動負荷心エコー図の利用を始めています。

最後に

当グループの取り組みなどにご興味のある方は,医師,検査技師問わず是非ご見学にお越し下さい。

(文責:山野 )
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