臨床研究
当科では,慢性腎臓病(CKD)や急性腎障害(AKI),腎炎,透析に関連した臨床研究を行っています.慢性腎臓病で外来通院されている患者様や,慢性腎臓病教育入院をされた患者様のデータベースを作成し,以下のようなテーマで研究を行っております。
- 慢性腎臓病患者における体液過剰と遠心性左室肥大の関連
- 普段の食塩摂取量と入院後の腎機能,血圧の変化についての検討や
- 腎不全教育入院を行った患者の長期的な腎予後や生命予後についての検討
また学外の施設と共同して、以下のような研究が進行中です。
- 日本腎臓学会の腎生検レジストリー(J-RBR)データベースを用いた感染症関連腎症の臨床像と腎病理所見についての検討
- 京都近郊の透析施設に協力をいただき,透析患者とC型肝炎についての研究
基礎研究
京都府立医科大学 腎臓内科では学内講師である草場の指導のもと、4人の大学院生が基礎研究を行っております。

研究内容
近年多くの疫学的研究により、急性腎障害(AKI)の罹患回数やその重症度が将来的な慢性腎臓病(CKD)への進展危険因子になることが明らかとなっています。わが国では2014年末において末期腎不全により透析加療を受けている患者数は32万人を超え、その増加速度はやや鈍化傾向にあるものの、依然として年々増え続けています。わが国だけでなく世界的にも透析医療は患者本人だけでなく医療経済への負担となるため、CKD発症危険因子としてのAKIの早期発見、治療法の開発は大きな意義を持つと考えます。
原因によらず、腎障害後の腎組織の修復が不十分である場合には組織障害が残存し、結果として腎臓は萎縮し、腎機能が低下するという機序は共通しています。そして慢性期に見られる組織所見は正常腎組織の減少と、間質に存在する筋線維芽細胞による細胞外基質の産生に伴う組織の線維化です。

その疾患形成の多様性から、現在のところAKIに対する治療戦略として、発症予防、重症化の抑制、尿細管上皮の再生の促進、慢性期における線維化の抑制など、何れの観点からも有効な手段は確立されていません。治療法の確立のためにはAKIからCKDへの移行機序およびAKI後の尿細管再生機転の基礎的な知見の理解が不可欠です。我々の研究室では以下のような研究テーマにより、急性腎障害の疾患メカニズムおよび治療法の開発を目指しています。
また学内、学外の研究室とも情報交換を行いながら、共同研究を行っております。
- 急性腎障害から慢性腎臓病へ移行する分子生物学的メカニズム
- 腎障害後に間質が線維化するメカニズム
- 新規遺伝子改変法であるCRISPR/Cas9システムの腎臓領域への応用
メンバー
主任研究員:草場哲郎
大学院生:亀﨑通嗣、上原正弘、山下紀行、木谷昂志、池田葵尚
Recent Publications
- . Ishida R, Kami D, Kusaba T, Kirita Y, Kishida T, Mazda O, Adachi T*, Gojo S.
Kidney-specific Sonoporation-mediated Gene Transfer.
Mol Ther. 2015 Sep 30. (再生医科学教室との共同研究) - Maarouf OH, Aravamudhan A, Rangarajan D, Kusaba T, Zhang V, Welborn J, Gauvin D, Hou X, Kramann R, Humphreys BD,
Paracrine Wnt1 Drives Interstitial Fibrosis without Inflammation by Tubulointerstitial Cross-Talk.,
J Am Soc Nephrol. Jul 23. 2015 - Kusaba T, Lalli M, Kramann R, Kobayashi A, Humphreys BD.,
Differentiated kidney epithelial cells repair injured proximal tubule.,
Proc Natl Acad Sci U S A. 111: 1527-32, 2014 - Kusaba T, Humphreys BD.
Controversies on the origin of proliferating epithelial cells after kidney injury,
Pediatr Nephrol. 29: 673-9, 2014 - Kramann R, Kusaba T, Humphreys BD.
Who regenerates the kidney tubule?
Nephrol Dial Transplant. 30: 903-10, 2014