循環器内科医は欧米では一般内科を習得した医師たちが進む分野で特殊な位置におかれていることはご存知でしょうか?これはあらゆる疾患が人間の循環動態に影響を及ぼすからであり、当然循環器内科医は全身を診ることができないといけません。医師という職業に就くにあたり、やはりひとの生死に関わる仕事がしたいと思うのは根源的な理由です。循環器系の仕事は当然生死を分ける仕事であり大変重要で大変な仕事であることは間違いありません。遣り甲斐という意味では極めて大きなものを貴方にもたらしてくれるでしょう。
ただ、それと同時に大変すぎて自分に出来るだろうかとお考えになるのも無理はありません。ただし経験を積めばだれでも対応できるようになるのです。自分やその病院でできることの限界がはっきり把握できていれば充分に対応可能です。2-3年あればその手の限界は見えてきますので心配はありません。少々ドンくさくったって一人前になれます。事実私は同期入局のなかでも一番ドンくさい奴でした。その自分が今大学で学生や研修医の指導をしているのはとっても不思議な気分です。それほどやる気があった訳ではありませんが同僚や先輩に恵まれて諦めたりはしなかっただけです。逆に今となっては自分が出来が悪かった分出来の悪いやつの気持ちが良く解かって指導の助けになるんじゃないかとさえ思っています。勿論大学病院には当然のように優秀な先生が揃っていてNIHやらスタンフォードやらハーバード帰りの先生がいます。優秀な若手は放っておいてもそういった優秀な先輩の背中をみて育っていくので心配していません。意外とこんなオレでも役に立つことあるかもと思ったりして、でも今でも毎日勉強になることだらけで、時には研修医に教えられることもあります。元来が呑気な性格なので他のひとだったら落ち込むところが助かっているのかもしれません。
循環器内科に進んで一番良かったなと思うのは、死にかけていた患者さんが元気に歩いて退院することです。大変喜んでもらえて感謝もしてもらえます。(どこまで役に立っているかは別として) これが脳梗塞ですとなかなか障害なしで退院するのは難しい。これからも辛いリハビリで何とか社会生活に適応するのです。癌の場合もいつ再発するのか心配です。これが心筋梗塞の患者さんなんかは友人に『どこが病気なんや』などどからかわれていることも多いです。勿論心不全に陥り良くなっても生活や食事の制限が必要であったり、一旦心不全になると5年生存率は5割を切ってしまったりと決して良いことばかりではありませんが、ともかく自宅に帰って自宅で生活できるようにしてあげられるのです。
さらにそうしてお近づきになった患者さんとはこれからずっとの付き合いになります。心筋梗塞で死にかけた方は、流石に真面目に通院して薬も飲んでくれますし、我々の話に耳を傾けてくれます。私は元々人との付き合いが好きなので外来での患者さんとのお喋りも大好きです。このせいでどんどん外来の時間が長くなってしまうのですが、気がつくと私の外来は話好きのオジサンオバサンが集まってきて、さらに外来が長くなりナースに『ほんとうにもう先生は!』などど呆れられる始末。でも話を聞いてあげるだけでスッキリして元気になって帰っていくオバサンもある意味可愛いですし、内科医になって良かったナと思う瞬間です。
循環器内科の仕事のなかで花形といえばやはりカテーテルインターベンションでしょうか?実は私も大好きでCTO(慢性完全閉塞病変)なんかサラッと成功すると『カイカーン』なんですね。急性心筋梗塞がきたら夜中でもワクワクしながら循環器内科医が何人も集まってきて、オペレーターの人数が足りてると残念そうな顔をして外から見ている、でも治療が終わるまで帰らない。ちょっとアホちゃうかと思うこともあるんですが循環器内科医ってそんな奴が多いんですよね。
でもカテーテルが全てじゃないんです。最近の装置の進歩たるやあなたすごいですよ。特に心エコーってすごいと思います。昔では考えられないくらい色んなことが分かるんですよ。しかも何回もできますし。技師さんだけにやらせておくのは勿体無いですし、まだまだ研究・進歩の余地はあります。その他にもCTやMRIなどの非侵襲的検査もどんどん進歩しています。基礎研究でなくったって臨床研究でも一杯ネタは転がっています。私はといえば心臓核医学に一時期ハマっていて、少なくとも4千例の負荷検査、6千件の画像は診断したと思います。絶対になくては仕事にならないとは言いませんが、あると必ず役に立ちます。
私はちょっと苦手なんですが不整脈、最近のablationやCRTDなんかの進歩もすごいですよね。うちの病院でもどんどん症例が増えてますし、いまやPCIと並んで花形といえる状況です。心不全だって薬だけじゃなくて治療しちゃうんですから。
それに心臓リハビリの進歩もあなどれません。何せ下手な薬よりも何倍も予後を改善するんですから。心エコーができて心リハのプロなら絶対に需要はありますし、女性のみなさん子育てしながらバイトに如何ですか?
あとはそうですね、予防医学の分野としては高血圧、高脂血症の治療があります。これもなかなかに奥の深いものがあります。ドンドンと新しい薬やエビデンスが出てきており、これに習熟するだけで随分と患者さんが増えます。特に内科系で開業されるとしたら必須だと思います。何せ日本人の6人に1人は高血圧らしいですから。
以上のように、病院勤めでも開業でも、忙しいのが好きなひとでも嫌いなひとでも、手技が好きなひとでも嫌いなひとでも、どう転んでもオモシロイ、遣り甲斐がある、その仕事を選んだ人はみんなその仕事が大好きという職業、それが循環器内科という職業なんです。みなさん、だんだんその気になってきません?
京都府立医大 循環器腎臓内科の魅力
循環器内科医という仕事
循環器腎臓内科の魅力
京都府立医科大学はもともと優れた臨床医を育てることを目的に出発しました。臓器別にディビジョン化されるまではナンバー内科といって我々は循環器内科医である前にまず優秀な内科医になることを求められました。大学によっては臨床研究の分野で世界と渡り合うために非常に狭い範囲での臨床従事をさせる大学もありました。例えばカテーテルならカテーテルだけ、心エコーなら心エコーーだけ。その結果、入院主治医であるのに様々な検査や治療はそのスペシャリストに委ね、自分はICするだけといった事態が生じて います。我々の施設や関連病院ではできるだけ循環器内科に関係するあらゆることをトレーニングいたします。心エコー、核医学検査、カテーテル検査、インターベンション、ペースメーカー、不整脈のablation、ICDやCRTD、はては心臓リハビリなど。 また、非常に対象数が多い高血圧、高脂血症の治療。循環器内科の臨床では糖尿病は避けて通れないためにいやでも糖尿病の管理は身につきます。さらには先進医療である血管や心筋の再生医療まで我々の科の最大の特徴は循環器内科と腎臓内科が同じ医局にあるということです。昨今CKDが心血管病の極めて大きな危険因子であることが分かってきました。今後の動脈硬化性疾患との闘いのうえでは非常に強力なパートナーとなっています。
大学病院の逆襲が始まる。
平成16年度から新臨床研修制度が始まり、学生たちは大きな市中病院に出て行きます。 これはひとつにはcommon diseaseやプライマリケアの経験を積みたい、また、自分の意図した地域に留まりたいという考えがあったと思います。その結果一部の人気ある都会の病院では研修医が集中しあふれる、大学病院や地方の中小の病院は研修医が集まらないという事態が生じ、医療崩壊に拍車をかけたことは皆さんご存知でしょう。それから6年経過し人気の市中病院はどうなったでしょうか?その病院で研修した若手医師たちは全員がその病院の常勤医にはなれる訳ではないのです。後期研修が終わった時点でたいていは新たな就職先を捜す必要に迫られています。大学病院では特殊な疾患が多くを占めcommon diseaseは経験できないとお思いのかたもおられると思いますが、実は循環器内科は8割のかたがcommon diseaseなのです。そのうえで市中病院では経験できないような稀な疾患も集まってくるのです。
一時的に研修医が減った大学病院ですが、実は大学もいま変革の時期を迎えています。 臨床系の科では研究一辺倒ではもはや教授にはなれません。オペの出来ない外科の教授などもはや不要なのです。臨床と教育のできる臨床医が教授になる時代なのです。
最も豊富な人材を抱えているのが大学の教室であることは言うまでもありません。最近の状況を指を銜えて見ているはずがありません。臨床と教育に長けたスタッフを関連病院から大学に戻してテコ入れをしているのです。さらに市中病院よりも教育スタッフに余裕があり各専門分野でスペシャリストを配置しバランスのとれた教育を提供しています。
最近は市中病院でも心エコーは技師さんが中心となってきました。そのため大学に戻ってきた若手医師のなかには心カテばかりやっていて心エコーのとれない医師もいましたが、我々はそういった医師にも心エコーがとれるように再教育しています。技師を指導教育するのは我々医師なのです。各分野で毎週カンファレンスを行い症例の共有を通じて教育と知識の拡充に努めています。
我々の仲間になって、まず一人前の内科医になり、さらに全ての分野に精通した循環器科医となり、そのうえでスペシャリティを極めようではありませんか?
少しでも興味を持ったなら、是非一度我々の施設を見学してみてください。我々の熱意が伝わると思います。